資本主義は嫌いですか 竹森俊平

資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす

資本主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす

分かりやすい上に面白い。そりゃ売れるわな。
キーワードは3つ。「バブル」「テールリスク」「流動性


第一章はサブプライム危機、およびバブルについて。RMBS(Residential mortgage-backed security=住宅抵当証券),CDO(Collateralized Debt Obligation債務担保証券)辺りの事を知らなければじっくり読む価値がある。知ってれば前半のほとんどは飛ばせる。
後半が難儀で、バブルの根本原因を新興国から先進国への投資輸出と見る。対策の一つが新興国内部に投資対象を作ること(内需拡大)。
しかしアジア通貨危機で手痛いダメージを受けて以降、黒字を増やして外貨準備高を上げ、外国へ投資する傾向にあるという。
東欧だけはEU加盟などの縛りがあってか資本輸入しているが、軒並み苦しい状況になっているので新興国の立場からすれば正しい判断に見える。
東欧はEUからある程度援助を引き出せる可能性はあるが...
もう一つの対策として挙げられているのが経済成長率抑制。しかしこれも問題山積。

p149-150
経済的には、それで落ち着いた状態になるのかもしれないが、政治的にはどうだろうか。ロシアや中国の強権的な政権は、経済成長率の低下という厳しい新事態に直面しても、「正当性」を維持し、国民を一つにまとめ続けることができるだろうか。
 「成長力の低下」によって、政治的に厳しくなるのは先進国でも同じである。日本においては、「上げ潮派」の構想が、まず絶望的になる。金利が成長率を上回るという「動学的効率性」の条件が満たされる「正常」な状態の下で、日本の政府は増加する金利負担と闘わなければならない。成長率に急カーブがかかってきた日本経済が、果たして増税の負担に耐えられるものなのか。

第二章が白眉。2005年8月に行われたカンザスシティー連銀が主催したシンポジウムのレポートなのだが、サブプライム危機以前にも関わらず、その問題点や対策が既に議論されている。これは一見の価値あり。
第三章は流動性についてだが、取って付けた感がある。雑誌に寄稿されたものの再録だろうか?