「かわいい」論 四方田犬彦

「かわいい」論 (ちくま新書)

「かわいい」論 (ちくま新書)

若干信頼性に欠ける。
学生へのアンケートが250人弱な上男女/田舎、都心/20歳以上と20歳未満で分けてるので。
一番信頼性が薄らいだのは「月野うさぎという名前は月経を想起させる」というような記述だったがなw
まぁ「かわいいものの具体例」として男子が単語1つか2つくらいしか記述しないのに対し、
女子は絵入りで丁寧にいくつも列挙してるところなんて面白いなぁと思った。
なんとなくJITTERIN' JINNの『プレゼント』を思い出しましたね。


とは言え、細かいことに目を瞑れば割と「かわいい」について適切に分析されてると思う。
特に男子については「かわいい」といわれるのは恥ずかしいことだという認識や、
女子も20歳未満では何のてらいも無いが、それを過ぎると「かわいい」しか語彙が無いことに抵抗を生じてくるといった辺りはなるほどと思う。
一番なるほどなーと思ったのが『枕草子』での「うつくし」『斜陽』での「かわいい」に関する記述。
昔の「うつくし」がほぼ今の「かわいい」に相当する言葉だという点と、
太宰治が『斜陽』において色んな「かわいい」を表してるあたり、汎用性の高さは昔から変わらないのだなぁと。
確かに何でもかんでも「かわいい」としか言わないのも多少問題あるけど、全てを包括する「かわいい」は
コミュニケーションにおいてそれなりに価値のあるものだなぁと再認識。
そしてそれが昔から受け継がれているものなんだという安堵感。それだけでも読む価値はあるかも。