不況のメカニズム 小野善康

こうふうと被ってしまった訳だが。
以前紹介した『経済学という教養』に書いてあったことだが、財政政策が専門の人は金融政策を、金融政策が専門の人は財政政策を重視するパターンが日本では見られる、らしい。
そのうちの一人。金融政策が専門だが不況対策は財政政策を推奨する。
その理由として、小野氏は『経済学という教養』のあとがきに「金融政策の専門家は金融政策の、財政政策の専門家は財政政策の限界を知ってるから」
と言ったような事が書いてあったような気がする。
コレが本当かどうかは分からないが、小野氏が新古典派からの鞍替えをした人という事を考えると、この人特有の思考の癖かもしれないな。


内容は小泉改革直後の2007年4月発行だからか、個人的な変遷からか、概ね新古典派批判がベースになっている。
古典派の問題点の指摘には切れ味が出るが、ケインズ理論のどの部分が正しいかという取捨選択は本当にそれが正しいのか?という疑問が残る。
自分の中では財政政策か金融政策かの論争が見たいので、そういう意味では個人的に不満が残る。まぁ仕方ないがw
インフレターゲット批判はわずか3p。

p213
今後、日本の景気は徐々に回復し、あと20年もすれば再び好況とそれに続くバブル崩壊が起こるであろう。

あとがきの上記の部分で、景気分析に関しては信頼性に欠けるという印象を持ったがなw

p195
どのようにして人々にインフレ期待を持たせるかという肝心の点については、明確な方法がわからない。たとえば日本銀行がこれからインフレだと言ったところで、だれも信用しないであろう。実際、平成不況のもとで日本銀行は懸命に貨幣供給を増やして、市中の貨幣量を増やそうとしたが、現実には貸出金は増えず、金融機関の信用創造を含む広義の貨幣の総量は増えていかなかった。深刻な不況下で貨幣量の拡大ですら困難な状況で、どのようにしてインフレを起こすことができるのであろうか。

インタゲ批判は必ずバブル後の金融緩和が無効だったと論ずる。これは確かに正当性を持つ。
リフレ派はこれに対し、緩和策が不十分だったとするか、上限を設けたことが問題だったとする。これも一理ある。
上限を設けたということは、もうこれ以上は緩和しないと明言してることであって、期待感を抱かせるのは難しい。
時期的にこの本の中では無理な話だが、インタゲ批判派にはこの主張(半分言い訳?)に対する批判を是非して欲しいものだ。
もう二つ。日本のリフレ派の最後の拠所は高橋是清だが、あの政策をインタゲ批判派はどう分析するのか見てみたい。
まだ見てないのは単に自分の勉強不足かもしれんがな。
現在アメリカが必死こいて金融緩和策を実施して、株価もそれなりに反映してる結果が出ているが、これもどう分析するのかしら。


個人的には金融政策は効果があると考える。少なくとも金融引き締めの効果を否定する人はまずいないだろう。
無論、引き締めとは逆の金融緩和が果たして効果あるかに関して議論が分かれてる訳だが。
需給ギャップがあるから貨幣への需要が増大しているという見方までは合ってると思う。
これを貨幣の供給不足、言い換えれば貨幣の需給ギャップと認識するか否かなんだろうな。
ギャップがあって、そこに問題があるならそれを埋めるというのは決してアヤシイ発想ではないと思うんだがなぁ。


日銀が言ったからって信用しないのは確かだから、市場の動向をきっちり反映すりゃいいだけの話。
市場の動向を変える為の金融政策なんだから、それと全く関係ないところから金融緩和の上限25兆とか決めても意味ねーべ、と。
金融がどんどん緩和され続けるという見込みが信用されて初めて効果が出るんだし。
以前から述べてるが、先ずはこれ以上溜め込めても仕方ないと思わせるまで貨幣を溜め込ませるべしというのが自分の景気対策の根幹。
少なくとも国内だけを見ればリフレでいいと思うのだが。
まぁ貨幣も信用の問題なので、貨幣への不安はバブル同様、急激に崩壊(ハイパーインフレに移行)する可能性はあるから、その辺りは注意する必要があるだろうが。