現代に生きるケインズ 伊東光晴

まぁ委員会にこの人が出てくれるのが一番いいんですけどね。
ご高齢なのでTV出られるかどうか分かりませんが...
新書とは言え、多少数式やグラフが出てくるので数学苦手な方には辛いかもしれないが、
それさえ問題なければ新書らしくコンパクトに纏まっているのでお勧めできる。
批判の論点がしっかり見えるから、反ケインズな人もこの本の理論をどう反論できるかという思考実験の為にも読むべき。


とまぁ、内容に触れないのも何なので。

p186-188
IS−LM分析にもとづく政策が、社会的に大きな力となって主張されたのは、1990年代の日本の不況期である。そしてその帰結は、まったく有効性を持たないというものであった。当然である。誤った理論にもとづく政策が有効性を持つわけがない。
(中略)
具体的には、銀行が持っている短期債権を日銀が購入し、その代金を銀行が日銀に持っている当座預金勘定に振り込むということによって、各銀行の保有する通貨を増加させようというものであったが、融資先のない銀行は、この資金を日銀の当座預金という無利子の形で積み増すことになっていた。各銀行が日銀に持つ当座預金残高の正常値は2002年まで約四兆円、2003年以降は約五兆円であるが、2004年には30兆円を超えてしまった。使われることがなかったのである。
つまり、IS-LMマネタリストの主張である「通貨は供給すれば使われる」という過程は現実に崩れ、経済内部の経済活動にもとづく通貨需要量を重視するケインジアンの主張どおりになったのである。


日本銀行「金融経済月報」2004年10月 図表33
これは↓にも書かれていた内容。
日本経済を問う―誤った理論は誤った政策を導く
だが金融緩和は2006年3月まで行なわれていた。



日本銀行「金融経済月報」2006年11月 図表32
当座預金の上昇が止まってるのは、量的緩和が効いたのではなく、30-35兆円を維持するのが政策目標となったため。
量的緩和ハイパワードマネーを上昇させても、マネーサプライが上昇するという結果にはならなかったと。