鉄が地球温暖化を防ぐ 畠山重篤

鉄が地球温暖化を防ぐ

鉄が地球温暖化を防ぐ

環境トンデモ本キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! とwktkしてたが...残念ながら内容は意外にまっとう。
一応、地球温暖化に関して書いてなくもない。
地球温暖化二酸化炭素排出増大が原因であり、これを是正する必要があるという前提に立って書いてはいるが、
鉄を使えば理論上二酸化炭素を吸収できる計算にはなるよ、という紹介をしているだけである。


主な内容は、海水に溶けているさまざまな栄養素のうち最も足りないのは鉄分であり、これを補充すれば海が豊かになるというものだ。
沈没船が漁礁代わりになっている光景をよく見るが、あれは鉄分濃度が上がったのが原因と考えると確かに納得する。
結論にするとえらいあっけないが、もし本当だとしたら実に夢のある話だ。
ガラパゴス諸島沖での実験では、5マイル四方の範囲に445kgの鉄を撒いたら、植物プランクトンの総数が30倍に、吸収された二酸化炭素は推定2500tにもなったとこの本には書いてあるが、実際はきちんと証明できるような実験結果ではなかったようだ。


かねてから陸ではリン、窒素、カリウムの三要素を主に肥料として与えることで飛躍的に収穫を増やしてきたが、
似たような事をなぜ海でできないのか?と疑問に思っていた。
きっと肥料をやっても拡散してしまうためだろうとあっさり諦めたが。
しかし、最も足りないものが最もありふれてかつ安価な鉄であり、さらに必要な量はごくわずか(海水より鉄分が多い川の水でさえ0.2mg/ℓ)となれば話は別だ。
単純にコンブやワカメの養殖の効率があがるだけでもかなりの効果だし、プランクトンを増やして魚の餌にする方法もあるだろう。
直接養殖しなくても海が豊かになれば沿岸漁業の水揚げも増えるだろう。
さすがにコンブでバイオエタノールという話は眉唾ものだが。
効率も海草10kgから0.3ℓではなぁ...まぁ海草はほとんど水分だから乾燥重量で考えないといけないが。


と、結構オススメ的な感じで書いてみたが、正直eco japanのインタビューを読めば十分。
命の水を再生する「森は海の恋人」(前編)
命の水を再生する「森は海の恋人」(後編)


↑を読んだのなら、併せて松永勝彦教授のインタビューを読むことを薦める。
鉄の研究が生物多様性問題を解決(前編)
鉄の研究が生物多様性問題を解決(後編)
コレ読んでもらえば分かるが、鉄を撒いてもCO2削減にはならないそうだ。磯焼けの解消にもならないと。
バイオエタノールも実用的ではなく、単に燃やした方がよっぽど効率的だとさ。
そういう意味ではこの本はトンデモ本だと言えるのだが。