官の詭弁学 福井秀夫

官僚版『奇妙な理論』

官の詭弁学―誰が規制を変えたくないのか

官の詭弁学―誰が規制を変えたくないのか

ここんところデータは公表すべし、公開で議論すべきという事を繰り返し述べてますが、それを痛感する本。
疑似科学を批判した『奇妙な理論』という名著がありましたが、それの官僚版と言っていい。
奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

この本はタイトルからは全く想像できない爆笑の本だったが、『官の詭弁学』も困ったことに爆笑モノ。
月刊『フォーサイト』に連載された「情報公開ウォッチング1〜13」の加筆修正版。

「審議会答申は委員の見解をまとめるものじゃない。役所の政策を追認してもらう手続きだ。」
これは、多くの官僚が半ば公然と語る言葉である。これは著書が旧建設省で多くの審議会事務局を務めたとき、先輩から教えられ、かつ後輩に伝えられてきた指針でもあった。

官僚が権威者を委員として指名し、官僚が資料や内容を決め、権威者にお墨付きを貰う。委員はその対価としていくばくかの報酬と、審議会に名を連ねたという名誉を受け取る。こういった癒着が延々と繰り返されてきた。
この構造を崩したのが議事録の公開だった。


 著者の知る限り、この点で画期的だったのが1996年に答申を行なった経済審議会行動計画委員会「土地・住宅ワーキンググループ報告」であり、
2001年度内閣府に総合規制改革会議が設けられたことだったそうだ。
特に総合規制改革会議は関係省庁の規則による権威を剥奪することが存在意義であり、官僚との癒着を前提としていない。
これに加えて議事会が公開されたため、官僚にのみ適用する珍妙な論理は淘汰されていくことになる。


と、いくら説明しても面白さは全く伝わらないので、読んでくれとしか言いようがない。
強いて問題点を挙げれば、出身の建設省絡みの議題がないことですかね。
今年一番笑ったお勧めの本ですね。