コンビニ ファミレス 回転寿司 農林族―田んぼのかげに票がある 中村靖彦

コンビニ ファミレス 回転寿司 (文春新書)

コンビニ ファミレス 回転寿司 (文春新書)

食に関する当時の現状を幅広く取り上げているいかにも新書な本だが、
個人的に印象深かったのが 第五章 なぜ、コメだけが余る? 


昔からなぜコメだけが特別扱いされているか不思議で仕方なかった。
確かにコメは特別な存在ではあるが、不思議に感じた端緒は
「そもそもコメって日本人の主食なん?」
という疑問だ。
コメは確かに全国で採れるが、昔は東北地方でほとんど栽培されてなかったはずだし、
稗、粟、麦が栽培されてた地域もあるはずだ。
小麦が主に栽培されてたからこそ讃岐地方にうどん文化が根付いてるんだし。


コメが特別な存在である原因が租庸調にあるのでは?という考えに至った。
コメが租税の対象になった原因が、貨幣経済が浸透してない時代に稗や粟のような
価値が低い作物より、価値の高いコメの方が輸送コストを考えると租税に向くからではないかと。


戦前のコメの価値についてはともかく、戦後いかにコメが特別な存在であるかが分かる。
まず驚いたのが、10アール当たりの年間労働時間のデータだ。


稲作 38時間
露地野菜 110時間
温室ハウス野菜 212時間
温室の花栽培 236時間


1970年に117.8時間だったのが約1/3になっているという。
本来なら労働時間短縮は米価を下げ、農家数の減少に繋がる筈だが、
政治家は最も多いコメ農家からの支持を得るために米価の維持に躍起になる。
食管制度のおかげで価格は安定、手間も掛からないとなれば多少零細でもやっていける。
多少零細でもやっていけるから兼業農家が増え、コメ農家の数が維持される。
さらに零細性を維持するため、追い討ちを掛けるように減反政策だ。


農林族―田んぼのかげに票がある (文春新書)

農林族―田んぼのかげに票がある (文春新書)

言わば第五章のスピンオフ新書。
いかに農業政策が政治家によって歪められているかがよく分かる。
衆議院議員松下忠洋の言葉が端的に表している。

野菜は2兆6千億円の出荷額でありながら、農水省の予算では200億円も使っていない。
一方コメと言えば2兆5千億の出荷額で1兆5千億くらい使ってますよ。
ほとんどの金をコメに使ってたんだ。しかし、今はまさに転換期だね。

農林族と農家や農協との関係が分かりやすく書かれていてかなーり良い。
コレを読むと自民党政権のままではいかんと思うのだが、
民主党が現状打破する政策を打ち出してるかと言うと...
変に公共事業やるよりは農家にばら撒いた方がマシなのかもしれないが。